【目的】
心拍変動のパワースペクトル解析画像は、抑うつ状態の有無を視覚定性的に把握する視覚的心理検査になりうることを既に指摘した。そこで今回は、ホルター心電図による自律神経指標の定量的評価を試み、抑うつ状態の重症度に関して検討を加えた。
【対象・方法】
対象は、25例、年齢14〜85歳(平均年齢55.1歳)であり、対象例を寛解期(Rem)、軽度抑うつ(D-1)、中等度抑うつ(D-2)の三群に分類した。ホルター心電図は、5分区間の2拍連続する洞性心拍のR-R間隔平均値(NND)、変動係数(CVRR)、全区間平均値の標準偏差(SDANN)、副交感および交感神経の各活動を反映するとされるHF、LFとLF/HFを指標に解析した。
【結果】
時間領域のうち、NNDは、抗うつ剤連用条件下にありながら、抑うつ状態が重症化するに連れ有意に短縮した。SDANNは、D-1とD-2間に有意差を認めなかったが、CVRRは、夜間帯NNDと同様の成績が得られた。周波数領域のうち、LFは、RemがD-1、−2に比し有意な高値を示した反面、後二者間には、有意差を見出し得なかった。一方、HFおよびLF/HFは、抑うつ状態の悪化に伴い前者の場合に低値化、後者において高値化を呈し、且つ、三群間に有意差を認めた。
【結語】
ホルター心電図で得られる自律神経指標は、抑うつ状態の重症度を判定する客観的情報源になりうるものと考えられた。また、かかる情報は致死率の高いうつ病の自殺行為を未然に防止する手掛かりとなる可能性が示唆された。
精神状態像と心拍変動との関連(第3報)
-パワースペクトル解析による抑うつ状態の重症度評価-